起立性調節障害という病気を知っていますか

朝なかなか起きれなく午前中調子が悪い、立ちくらみや目まいがある、頭痛腹痛などをよく訴える、体がだるく元気がないなどの症状は起立性調節障害という病気のことがあります。この病気は自律神経のバランスの崩れが原因で、朝起床したり起立した時の循環調節がうまく機能せず脳の血流低下により起こることがあります。小学生高学年から中学生にかけて増加します。家族から怠けていると間違われたり、遅刻や学校に行けなくなる原因になることもあります。

診断は詳しくお話を聞いて他の病気でないことを確認して起立試験をして診断をします。

起立性調節障害であれば、規則正しい生活、適度の運動、水分を多めに摂取することを指導します。また血圧を上げ、血液循環を改善する薬もあります。治るまでには時間がかかりますが、本人の怠けや、心の問題だけではなく、治療できる病気なのでご相談ください。


小児の便秘

子どもの便秘は、そのことを直接訴えて受診されることは少ないですが、子供でもありふれた病気です。

大部分は生活習慣の問題や、食事内容の偏りなどで起こります。また離乳食の開始、トイレットトレーニングの開始、保育園、幼稚園、学校への入園入学がきっかけになることもあります。

排便が週に1-2回とか、排便時に腹痛を訴えたり、出血を伴うとか、コロコロの硬い便が少量出るだけとか、繰り返して腹痛を訴えるような場合には、便秘の可能性があり、受診して治療する必要があります。

「排便を我慢する➡便が硬くなる➡排便時に痛い➡排便を我慢する」の悪循環が起こりなかなか治りません。

生活習慣、食事内容などの見直しても治らない場合には、便を柔らかくして排便をスムーズにする薬があります。便秘は繰り返すことが多いため、完全に治るには規則正しい排便リズムができるまでお薬を使うことが必要になります。

時には夜尿症の原因となったり、稀には治療すべき他の隠れた基礎疾患が見つかることもありますので、気になったら相談してください。


子宮頸癌ワクチンの推奨

子宮頸がんワクチンは、現在(令和3年11月)対象年齢に方は、定期接種として無料で接種できます。

子宮頸がんは性交渉によりヒトパピローマウイルスに感染し、その一部の方が前がん状態、またその一部が子宮頸がん発症します。子宮頸がんワクチンは、ヒトパピローマウイルスの感染を防ぐワクチンです。日本では毎年10000人程度発症し、3000人程度死亡しています。また性交渉の年齢が早くなった現在、結婚出産の時期に発症し手術後、流産早産、不妊やホルモン異常をきたす方も出ています。

日本では一時期、子宮頸がんワクチンの接種後、全身疼痛、四肢麻痺などの多彩な症状の訴えが相次ぎ、定期接種にもかかわらず接種の差し控えが続いています。これらの症状は「機能的身体症状」とされ大部分は回復しており、ワクチンとの因果関係は否定されています。

海外では、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパではワクチンの接種は続けられており、フィンランド、スウェーデンではワクチン接種により子宮頸がんの減少を認めています。WHO、世界産婦人学会では、有効性と安全性を認めています。

日本では定期接種として続いているにもかかわらず、接種率は0.5%程度と極端に低迷しています。日本産婦人科学会、日本小児科学会、日本医師会などでは2018年に再度子宮頸がんワクチンの有効性、安全性を推奨し、万一の副作用に対しての診療体制も準備しています。

小学6年生から高校1年生の女の子のいる家庭ではもう一度かかりつけの小児科医で子宮頸がんワクチンについて相談しましょう。


新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルスは、野生動物由来の新しいウイルスなので、ヒトは罹ったことがなく免疫がないので、誰でもかかる可能性があります。

新型コロナウイルス感染症は、令和5年5月から感染症法2類から5類に移行しましたが、新型コロナウイルスが消えたわけではありません。密集した場面では、マスクなどで感染に注意し、感染が疑われれば、受診するようにしてください。またワクチンの効果は長期間は持続しないので、感染で重症化の危険性のある方は、ワクチンを適宜接種をお願いします。


乳児喘息(にゅうじぜんそく)

2歳未満の赤ちゃんのアレルギーによって起こる喘息です。

0~1歳の乳幼児が咳や喘鳴ぜんめい:ヒューヒュー、ゼーゼーという呼吸の音)の発作を繰り返すことがあります。こうした症状はRSウイルスヒトメタニューモイルスなどのである呼吸器のウイルス感染症によって一時的に起こっている場合がありますが、中には乳児喘息の始まりであることもあります。ただ、子どもはウイルス感染がきっかけになって気管支喘息の発作を起こすことも多く、実際には専門家でも乳児喘息と一時的な喘鳴の区別が難しいです。乳児喘息の診断は本人や家族のアレルギー疾患、お薬(飲み薬と吸入薬)の効果、アレルギーの検査、経過などによって総合的に判断します。治療ではアレルギーのお薬を中心に使います。


アトピー性皮膚炎

かゆみと繰り返す湿疹(しっしん)が特徴の皮膚に炎症を起こす病気です。

小児、特に乳幼児では赤くてカサカサ、ジュクジュクしたかゆみのある湿疹がしばしばみられます。

以前から乳幼児では食べ物が原因で湿疹が起きるとされ、食物アレルギーの検査や食べ物の除去が強調され、食物除去療法がされています。最近は皮膚のバリア機能の障害で湿疹が起こり、そこから食べ物が皮膚から吸収されて食物アレルギーが起こるのではないかという学説が有力になっています。アトピー性皮膚炎を既に発症している方は、とびひ、単純ヘルペス感染所、水いぼなどの合併症が症状の悪化の時などに起こりやすいです。合併症を予防するためには保湿剤によるスキンケアだけではなく、医師の指示による症状にあった適切なステロイド軟膏を使う治療も必要です。


食物アレルギー

 

特定の食物が原因でアレルギー反応が起こり、じんましんや呼吸困難などの症状が出ます。

近年、小児、特に乳幼児では食物によりじんましんなどのアレルギー症状が出る方が増えています。

アレルギーの発症を心配して離乳食の開始を遅らせたり、特定の食品を離乳食に加えることを遅らせる保護者さんがおられますが、専門家の間で発症予防の効果はないとされています。かえってそのように遅らせると、その食品に対してアレルギーを起こしやすいというデータが続々と出ています。

現実に食物アレルギー疑われる場合には、保護者による自己判断や診断、皮膚テスト、血液検査の結果だけに頼らず、専門医による除去誘発試験が必要な場合もあります。

現在では、たとえ食物アレルギーがあっても制限はできるだけ最小にして症状が出ない範囲で摂取してもらうというのが、多くのアレルギー専門医の方針です。また、食物アレルギーに対する積極的な治療として、経口免疫療法が注目されています。この治療法は時々、激しいアレルギー症状を伴うこともあり、現在はまだ研究段階です。限定された施設でのみ実施されており、一般的な治療としては勧められていません。

当院では食物負荷試験に基ずき食事指導を行い、少しでも早い食物アレルギーの改善を目指しています


アレルギー性鼻炎(スギ花粉症、ダニアレルギー)

花粉やダニ、ホコリなどのハウスダストなどが原因でくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどがおこる病気です。

鼻炎による症状は睡眠を妨げたり、勉強や仕事の効率を下げてしまい、本人にとって想像以上に苦しい症状です。そのため、特に受験を数年後に控えたお子さんや、将来妊娠を予定される方は、それまでに症状を良くさせておくことが望まれます。

最近、スギ花粉症やダニアレルギーによる鼻炎に対しては、舌下免疫療法という治療の選択肢ができました。効果のある方は3~4年間治療を続けると、治療を終えても効果が持続します。スギ花粉症に対しては、スギ花粉症のシーズン中は抗ヒスタミン薬の内服をし、シーズンが終わってから免疫療法を開始する必要があります。アレルギー性鼻炎は、睡眠、勉強にも差し支えるので、小学生ぐらいから治療を始めましょう。

 


おたふくかぜ(ムンプス、流行性耳下腺炎)

おたふくかぜはムンプスウイルスによって耳の下の耳下腺が腫れたり、熱が出る病気です。

子どもから大人までかかりますが、2~9歳の子どもが好発年齢で、数年に1度流行し、年間に40万人~130万人が罹っています。身近に聞く病気なので軽い病気のように思われる方もおられますが、おたふくかぜでは髄膜炎難聴脳炎無精子症(成人男性の不妊症の原因)などの重症な合併症がおこることがあります。髄膜炎は100人に2~3人、難聴は500~1000人に1人の頻度で起こります。平成29年9月には日本耳鼻咽喉科学会から、おたふくかぜに罹って難聴になった患者さんが2年間に348人報告されたとの調査結果が発表されました。そこで、おたふくかぜワクチン接種の推奨と定期接種化への要望が出されています。

他の先進国では定期接種として2回のワクチン接種が行われていますが、日本では任意接種で有料なこともあり、接種率が30~40%と低く、流行が繰り返されています。

現在は有料ではありますが、MRワクチンと同時の1歳と小学校入学前の2回接種が勧められています。

自然感染での重い症状や後遺症に苦しむ前にワクチン接種を行いましょう。


夜尿症(おねしょ)

幼少期はおねしょがあっても必ずしも病気とは言えませんが、小学校に入学してからもおねしょが月に数回以上続く場合は「夜尿症」と診断されます。おねしょは夜間就寝中につくられる尿の量と尿をためる膀胱の大きさのバランスが上手くとれていない場合に起こります。おねしょのために宿泊行事への参加をためらったり、本人の精神発達への負の影響や悩み、家族の負担などの問題になることがあります。夜尿症は小学校1年生で約10人に一人の割合でみられます。1年間で夜尿症の10%の人が自然と治っていきますが、生活指導お薬(抗利尿ホルモン剤)、アラーム療法(おもらしをしたら鳴るブザー)を用いた治療法を行うことでより早く治り、夜尿症の悩みや問題から解放されています。お子様のおねしょに関して不安を抱えている方、悩んでいる方はお気軽にご相談下さい。


抗菌薬の正しい使い方

みなさんは抗菌薬の正しい使い方を知っていますか?日本ではこれまで「かぜ」、「急性気管支炎」、「下痢」に対して必要以上に抗菌薬を使われてきました。

今までは抗菌薬が必要な細菌による感染症か、抗菌薬が不要なウイルス感染症かの区別をすることが不十分な中でも、抗菌薬を出しておけば安心だという根拠のない考えや 抗菌薬を飲めば早く治るから処方して欲しいという患者さんからの強い要望に応えようとしたことなどがこうした状況をつくりだしていました。誤った使い方をすると、体を守ってくれている腸内の善玉菌を殺したり、抗菌薬が効かない耐性菌が増えてしまい、必要な時に抗菌薬が効かなくて病気の治りが遅れたり死亡することが増えています。

そこで、2017年に厚生労働省からウイルスによるかぜや急性気管支炎、胃腸炎と細菌による胃腸炎(サルモネラやキャンピロバクターなど)では必ずしも抗菌薬が必要ないことを説明して治療をするように指針が出されました。

小児科では症状の変化の早い病気を診ることが多いです。当院では、症状の経過を丁寧に診て、重篤な病気が疑われる場合には検査などを行って、手遅れにならないように、必要最低限に抗菌薬を使うことを心がけています。それには患者さんのご理解と協力が欠かせません。みなさんも正しく薬を使うために、熱が下がったというだけで勝手に薬をやめたり、以前もらった薬を自分の判断で使うようなことはしないようにして下さい。